続聖夜の贈り物_3章02

「あら、ギルベルトちゃん、お散歩?」
みんなで遅めの朝食を食べた後、アーサー達4人は連れだって朝にギルベルトが寄った市に来ている。


たった1度訪れただけだというのに、すっかり市場に馴染んだギルベルトに、朝の物売りのおばちゃん達がまたワラワラっと集まってきた。

「ギルベルト兄ちゃん、すごいねっ。もうこんなに知り合いできたんだ~」
とニコニコ笑顔を振りまくフェリシアーノもあっという間にその集団に馴染む。

そして
「あれは…一種の才能だな…」
と、憂鬱さを隠しきれないルートヴィヒと、

「なんていうか…入れないよな」
と、その活気に若干怯え気味のアーサーの人見知りコンビは、それを遠巻きにみていた。


「こういう時ってさ…屈託なくて可愛いよな、フェリ」
「フェリシアーノはいつでも可愛いぞ」
「まあそうだけど…」

二人並んだ状態で、お互い愛想良し組から目を離さず寂しく続く会話。

ニコニコ笑顔でおばちゃん達の好意を勝ち取ったフェリシアーノが仲良さげにギルベルトに話しかけ、それに対してギルベルトは珍しく照れたような笑顔を浮かべた。

まるで二人がお似合いのカップルのように見える。

というか…“見える”ではなく、明るく人当たりが良く誰にでも好かれる者同士で本当にお似合いだ。

そんなウツウツとした気分をひきずりながら、それでもまだそちらに目を向けていると、ギルベルトがおばちゃん達と2,3言交わし、ちらりとこちらに目を向け、おばちゃん達の視線が自分に注がれるのを感じる。

その視線はフェリシアーノに向けられていたような笑みを含んだものではなく、ちょっと驚いたような…そんな感じのもので……もしかしてギルベルトの恋人と教えられて、あまりの不似合いさに引かれたのでは…と、アーサーは居た堪れない気分になった。

そして思わず隣に立つルートヴィヒに
「ルート、すまないがちょっと気分が悪くて…あちらのベンチにいるから、話が終わったら迎えにきてくれ」
と言うと、返事も聞かずに白いローブを翻してその場を逃げ出した。


(逃げてどうなるものでもないよな……)
ギルベルト達のいる市場から丁度影になる場所にあるベンチに座って、アーサーは両手に顔をうずめた。

明るく可愛いフェリシアーノ。
天真爛漫で…みんなを楽しい気分にさせてくれる少年。
みんなにとって好ましい存在で…それなのに、自分のような嫌われ者にも優しくしてくれる。

従兄弟というには育った環境も血筋も違うわけだが、その優しさは、ギルベルトにも共通している。

たぶん二人とも優しいのだ。
優しいからアーサーのように他から嫌われて疎まれている人間が可哀想でとくに放っておけないのだろう。

おかげでアーサーは今、他者から疎外されている感を味あわないですんでいるのだが、本当にこれでいいのだろうか…。
自分は一方的に彼らから幸せを搾取しているだけな気がする。


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