長兄にしか会ってないけど、わりと普通の兄貴してて驚いた」
それに対してアーサーはこっくんと首をたてにふる。
「スコット兄さんは仕事が忙しくてあまり家にいなかったけど、いつも俺を含めて家族全体のことを考えてくれているし、かあさまと下の2人の兄さんたちは、とうさんがおかしくなってからはいつも一緒にいてくれた」
「おかしくって…アルトにアルトの母親の姿重ねたってアレか?」
「うん。11歳の時、普段は家に帰ってこなかったとうさんがいきなり帰ってくることになったんだ。
で、下の兄さんにふざけてワンピース着せられたんだけど、それ見てスイッチはいっちゃったみたいで……」
「あ~…なるほど。
でもワンピースって…それまでは結構意地悪されてたり?」
「いや?あまり構われなかったな。
たぶん今にして思えば、愛人の子だからってよりも男兄弟で男だらけだったから、興味がなかったんだと思う。
2番めの兄さんは妹がほしかったって言ってて、俺がまだ小さくて男っぽくなかったから、たまには可愛い服着せて妹ごっこさせたい感じだったし、かあさまにいたっては、とうさんから俺を隔離するとなった時に、自分の部屋ではふりふりの服とか着せたがって着せてたし」
なるほど…男兄弟だらけで可愛い顔の末っ子というと、なんだかアルアルな気がしてきた。
「まあ…確かにアルト可愛い顔してるもんな。
おふくろさんや兄貴達の気持ちはわかる。
俺も男兄弟だし。
弟は俺よりガチムキだから可愛い服を着せたいとかはなかったけど、アルトみたいに可愛い顔してたら、着せてみたいくらいは思ったかも…。
本人は嫌だろうし、そういうつもりなくても嫌がらせになっちまうから、実際に着せはしないけどな」
まあ…小さくて色々よくわからない頃なら、こっそり着せてこっそり写真くらいは撮って、こっそり携帯の待ち受けにくらいはするかもしれないが……と、これは引かれたくはないので心のなかでのみつぶやいたのだが、驚いたことに、アーサーは
「別に…それでかあさまや兄さんが楽しいなら良いんだけどな。
俺も……フリルとかレースとか…可愛いものを見るの、嫌いじゃないし…」
と、最後は少し恥ずかしそうにボソボソっとこぼす。
へ??
「いや…じゃねえの?!」
と、驚いて返すと、慌てて
「べ、別に自分が着たいとかじゃないけどなっ!!
似合うとかじゃないのもわかってるけどっ、単に可愛い服自体を見るのが楽しいっていう気持ちはわかるから、嫌じゃないだけでっっ」
と、真っ赤になって言うが、ギルベルトはそのあたりは半分くらい聞いてない。
「じゃ、俺様がみたいって言ったら着てくれるかっ?!
可愛い格好したアルトが見てみたいっ!!」
と、思わずおもいきり身を乗り出すと、
「…似合うわけじゃないぞ?」
と、こてんと小首をかしげながら、それでも了承してくれる。
「よっしゃああぁああ~~!!!」
思わずガッツポーズ!
いや、別に普通の服装でも可愛いには可愛いのだが、ギルベルトの大切なお嫁さまはあまりに可愛い容姿をしているので、可愛い格好をさせてみたい。
「どうせならウェディングドレスとか着てみようぜっ!!
アルトの父親のこととかあるから公にはできねえけど、どうせなら1週間ほど休みとって高原の別荘に行って、そこで着て記念写真撮ろうぜ!!」
もうテンション上がりまくり、夢が広がりまくりである。
最初はギルの勢いにびっくりしていたアーサーも、休みをとって別荘に旅行と聞いてはしゃぎ始める。
というわけで、なにも解決をしたわけではないのだが、とりあえずいったん実家関係からは距離を置き、仕事は自宅でするということで別荘へ避難。
そこで情報を集めてきちんとした対策を練ろうと、ギルベルトは再度副社長にメールを送ったのだった。
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