ローズ・プリンス・オペラ・スクール第七章_1

対の悩み


うららかな日差しの中、中庭の一つにある芝生でランチを広げる一団。
敷物を広げてその上に並べられたランチボックスはどれも美味しそうな料理であふれている。
双子と菊は自分達の手作りで、アルフレッドとアーサーはそれぞれパートナーの手作りだ。

「フランシス…嫌だって言ってるのにサラダ入れるのいい加減止めて欲しいんだぞっ!
肉も少ないしケチなんだぞっ!」
プク~っと膨れるアルフレッド。

「アルフレッドさん、作って頂けるだけでも感謝しなくては…。
第一フランシスさんはケチなわけじゃなく、アルフレッドさんの健康を考えてそういう風に作って下さっているんですよ。」

「お前…それ自分で作ってから言えよな?
普通な、そういう雑務って目下がやるもんだぞ?
文句あんなら自分で作れ」
とそれぞれ菊とロマーノから言われてもアルフレッドは堪える事なく、

「そんなに言うならサラダあげるんだぞ!」
と、菊の皿にサラダをまるごと移し、
「目上の人間が作ったものじゃないならいいんだろ?」
と、ロマーノのランチボックスから肉料理をごっそりと持っていく。

そんなランチタイムもいつもどおり過ぎて、最初は眉を潜めたり怒ったりしていた菊もロマーノも、もう肩をすくめるだけで流すようになっていた。

しかしそれを流せない人間が一人……。


――そうだ…これではいけないっ!
しなくてもいい…というよりしてはいけない固い決意を抱いた彼は、その日学校を早退したのだった。





アントーニョと一緒に暮らし始めてからアーサーは家事をしたことがない。
気づくとアントーニョにされている。

アーティそんな事せんでもええで~。親分がしたるさかいな。休んどき。

箒を持っても雑巾を持っても包丁を持っても当たり前に取り上げられる。

朝は当たり前に朝食がベッドまで運ばれ、夜はデザートをゆっくり食べている間に食器が全部洗われて…もうおはようからおやすみまで完璧に世話をされているのだ。

あまり積極的な性格でないアーサーはアントーニョのように勢い良く言われてしまうとそれ以上言えず、ついつい甘えてしまっていたわけなのだが、

普通な、そういう雑務って目下がやるもんだぞ

というロマーノの言葉は本当にもっともだと思う。

…というか、このままではアントーニョに呆れられて見捨てられる日も近いのではないだろうか…。
それは避けたい。

以前もそれが原因で呆れられたのではと思った時があったのだが、その時はそれはどうやら誤解だったらしい事がわかって、その後なぜかいきなり求められて抱かれてしまった事もあってグダグダのうちにそんな危機を忘れ果てていた。

見捨てられないうちに手を打たなければならないのに、今日ロマーノの言葉を聞くまでまた流されていた自分の脳天気さに我ながら呆れ返る。

心をガシっとつかむには、まずは美味しい料理だっ


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