オンラインゲーム殺人事件あなざーその1・魔王探偵の事件簿_2

キャラクタ作成――初日


記憶にある限り、いつも泣きながら帰らない父親を待つ母親を喜ばせたくて、幼い頃からひたすら勉強に明け暮れる日々。
そんなアーサーにはこれまでゲームなどで時間をつぶそうなどという発想はなかった。

はっきり言って今もゲーム自体にはさして興味もない。
でもファンタジーは秘かに好きだったりする。

――SomeDay my prince will come(いつか王子様が迎えに来てくれる)
などとは、さすがに女子ではないので思わなかったが、幼い頃は魔法使いになったら魔法で幸せを掴めるのでは?くらいは思っていた。

だからキャラはウィザードにしようか…と一瞬思ったが、万が一仲間が出来なくてソロをやるなら、回復もないと辛いのではないだろうか…。

そこで考える。
唯一の回復魔法の保持者プリーストの方が良いかもしれない。
基本は回復魔法だが、わずかばかりの神聖系の攻撃魔法があり、防御力をUPする魔法も使える。

仲間が出来ないかもしれない…と、友人を作る目的でやるのに後ろ向きに考えるのは、悲観主義者なアーサーらしい。

こうしてアクセス開始時間1時間前からPC前にスタンバって、開始と同時にピシっとプリーストを選択する。
取れた…嬉しい…と、1人PCの前で顔をほころばせる。。

キャラも自分に似せて、ファンタジー世界の住人な自分をイメージして浮かれる。
ああ…楽しい……。

一応地道にやるならソロでも出来て…でも、後衛に入るからもしかしたら誰かと一緒にやれるかもしれない…などと秘かに期待する。

最後に名前。
万が一…万が一でもすごく仲良くしてくれる仲間が出来て、リアルでも会いたいという話になった時、呼び名が違ったら混乱するだろう。

だから…キャラの名前はアーサー。
いつか文字だけではなく、誰かが肉声で呼んでくれる事を祈って…。


ポチッと完了ボタンを押すと、画面の中の自分にちょっと似た感じのキャラクタがクルクル回って光の渦の中に消えていき、プロローグ画面になった。

舞台はイルヴィス王国。
光の神を奉るその国を滅ぼそうと闇の魔王がモンスターを送り込んできているというありがちな設定。
参加者はその国お抱えの兵で、ミッションをクリアするごとにより重要なミッションを任せられ、最終的に魔王退治を命じられるらしい。

プロローグが終わると、真っ白なふわりとしたローブを身にまとった自キャラ、アーサーが街の広場にたたずんでいた。
どうせファンタジー世界ならカッコいい鎧とかを着てみたかった気もするが、まあ仕方ない。
それでも新しいゲームにはちょっとワクワクする。
アーサーは武器と防具をちゃんと装備している事を確認したあと、冒険をと街の外に足を踏み出していった。



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