フェイク!1章_1

プロローグ


「西英!時代は西英だったんですねっ!!!」
一枚のハガキをしっかりと手にして叫ぶ日本。

「ああ…イギリスさんも水臭い。爺にまで秘密にしておかなくても。
言って下さればお二人の仲をより親密にする素敵グッズを色々送って差し上げましたものを…!
とりあえず…今からでも送って差し上げなくては…」

大きなダンボールにリラックス効果のある香や入浴剤…は良いとして、YES!枕とか、怪しいコスプレ服とかが入ったあたりで、アメリカは大きく息を吐き出した。

「日本…スペインとイギリスだよ?フランスじゃないんだよ?
その中身、本当に送るつもりかい?」
目の下には隈…心持ちやつれた様子で首を横にふるアメリカに、日本は
「もちろんですとも!」
と、大きく頷いた。

満面の笑みを浮かべたスペインと少し困ったように微笑むイギリスの写真入りの結婚報告のハガキ…それにより日本が結婚の事実を知ったのは昨日だったが、それよりはるかに早くその事を知っていたアメリカは、最近すっかり意気消沈している。

日本に慰めてもらおうと思って来日したわけだが、当の日本はハイテンションすぎて、アメリカの傷心など気にもかけてくれない。

正直泣きそうだった。
もう帰ろう…二人の結婚の話が出ない場所に行こう…と、立ち上がりかけたアメリカに、日本は実に良い笑顔で言った。

「ではアメリカさん、一緒に新居にお祝いに行きましょうっ!」




アメリカの憂鬱


アメリカはイギリスが好きだった。
もちろん家族的な意味ではなく、恋愛な意味でだ。

自覚したのはもっとあとだが、思えば出会った瞬間に一目惚れしたに違いない。
そうでなければ食いしん坊の自分がフランスの美味しい料理を振りきって、何もなかったイギリスを選ぶわけがない。

イギリスに一人の男として見てもらいたい…それまで与えられていた特別な愛情を振りきってでも独立したのはそのためだ。

それからしばらくイギリスの方から距離を置かれ、少しずつ関係を修復できた頃には自分もいい加減捻くれて素直になれず、すったもんだの挙句、最近ようやく自分も精神的に落ち着いて、多少の皮肉くらいは口にするものの、まあ普通に接する事ができるようになってきた。

自分が穏やかに接すれば嬉しそうに応じるイギリスの様子に、時は満ちたと思った。

折しもフランスでの世界会議。
本当なら自国の方がいいのだが、時を逃しては何があるかわからない。

イギリスの好きな紅い薔薇の花を100本と言いたいところだが会議後に渡してその後食事に行きたいので、大きすぎても困るだろうと、外見年齢の23本。それを中心にした花束を用意して、イギリスの好きそうなスーツを着こむ。

レストランもこっそり予約した。

断られることなど考えてもみなかった…。

ましてや…それが
「ごめん…俺もう結婚の約束をしているんだ……スペインと」
などという言葉でとは…。






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