馬鹿っぷる危険!会議はピンク色_2

ピンクな二人にブルーな会議


「あ~…スペインとイギリスはどうした?」

定刻になり始まるEU会議。
開催を宣言する議長国フランスに、ドイツは空席2つを見て早速チェックをいれる。

それに対して、
(うん…お兄さんに聞かないで…)と遠い目をするフランス。

「一応イギリスは体調不良で遅くなるらしいぜ。」
と、そこでフランスの携帯のメールをみて知っていたため、伝えるプロイセン。

「そうか。イギリスはわかった。ではスペインは?」
と、そこでうやむやにせず飽くまで事実を追求するのがドイツのドイツたる所以だと思う。

イギリス命のスペインが体調不良…うん…どういう体調不良かは追求しないでおこう…の可愛い可愛い恋人を置いて来るわけはないとか、そういう暗黙のなんちゃらは通用しないらしい。

「あ~…まあ、あれだ。よしんばスペインが体調不良のイギリスを一人置いて来たとしたらな、ずっとあいつイギリスが大丈夫かとか会議なんかしてる場合じゃねえとかブツブツつぶやいててうるせえから、いねえほうが良くないか?」

苦笑するプロイセンに、事情を知らない国々がざわつく。

「ヴェ、どういうこと?スペイン兄ちゃん、今イギリスと一緒なの?」
と、そこで空気を読まない国の代表選手、イタリアが声を上げた。

そこでプロイセンが
「あれって…別に隠しとかなきゃなんねえとかじゃねえよな?」
と今更ながら確認してくる。

「うん…坊ちゃんがどう思ってるかはわかんないけど…スペインは絶対に隠す気ないね…というか…むしろ全世界に知らしめたいと思ってると思うよ……」

フランスはそれに対してこのところずっと続いている馬鹿っぷる被害を思い出してまた遠くを見つめた。

下手をすると今日の会議で
「みんな、聞いたってなっ!アーティーは親分の大事な大事な恋人やから、手出したらスペインブーツの刑やで☆」
と、怖いくらい爽やかな笑顔で宣言しかねないと思う。

「んじゃ、いっか。」
とフランスの答えにホッとしたように言うプロイセン。
見かけによらず意外に気遣いの人間である。

「あ~、なんかな、前回の世界会議後くらいに付き合い始めたらしいぞ。」
「え~、そうなの?あの時なんか揉めてなかったっけ?」
「なんだかそのあと色々あったらしくてな。ま、そういうこった。
とりあえず会議始めようぜ」

と、軽く事情を説明した後プロイセンがうながして、フランスがイギリスやスペインに関係ない議題から話を進めていく。

それでもきちんと欠席を届けられていない事にドイツが少し不満気に眉を寄せるのを見て、フランスは(まだまだ若いねぇ…)と、溜息を付いた。

おそらく…今日あの二人がきたら、来なかった方が平和だったとドイツは胃痛に悩まされる事になるだろうと思う。

そして…それからしばらく後、その予感はまったくもって正しかった事が証明されるのだった。





9時に会議が始まって2時間後…

いきなりドアが開き…

「さ、アーティ、入り。大丈夫か?」
と、スペインの声に促されて、まずイギリスが入ってくる。

「遅れてすまない。」
と言うイギリスは本当に疲れた様子で体調が良くなさそうなので、

「いや、大丈夫か?」
と、さすがにドイツが気遣うと、バチっ!!と、何故か静電気のように何かがはじけて、ドイツはたじろいだ。

「アーティ、ここ座り。イタちゃん、悪いけど席かわったって?」
と、スペインは持参した大きなカバンの中からなんとフカフカのクッションを出すと、会議室の椅子に置く。

「ヴェ、良いけど?」
と、素直に立ち上がりかけるイタリアに

「勝手に席をかわるなっ!」
とドイツがまた口を開くが、またチリっと何かが燃え上がるような感覚にたじろいで口をつぐむ。

「あ~、ヴェスト、とりあえず放っておけ。議題をこなすのが先だ。」
と、そこでプロイセンが間に割って入る。

「うん…もうあそこは放っておいて。先に進めよう?」
とフランスがさらに促すと、ドイツも渋々うなづいた。

「ドイツ…我儘言ってすまないな。」
と、そこで元来仕事に対しては真面目なイギリスがフォローの言葉をかけるのに、ドイツは今度は別の意味で絶句した。

体調が悪いせいなのだろうか…目尻が赤くなった潤んだ大きな瞳に、少し紅潮した頬。
声もあまり出ないのか掠れて小さい。
何故かそこはかとなく居た堪れないといった感じで恥ずかしげな雰囲気。

なんとなく…なんとなくだが空気が違う。

「あ、ああ。いや、体調が悪いなら仕方ない。」
ドイツは自分も赤くなってコホンと咳払いすると、視線をそらす。

「アーティーは親分のやでっ!おかしな目で見んとってくれるっ?!」
と、そこでドイツの視界からイギリスを遮るようにスペインがイタリアにかわらせた席に座って不機嫌にドイツを睨みつける。

「お、おかしな目でなど見ていないっ!」
と、もう明らかに真っ赤になって、ドイツは思い切り視線を逸らした。

「フランスっ!先を続けてくれっ!」

あ~あ、可哀想に…と、フランスはそんなドイツに同情する。

離れたフランスの議長席から見ても、今のイギリスは本当に“やっちゃいました”オーラが出ていて、もうはっきり言ってしまえば色っぽい。

なまじ童顔なだけあって、痛々しさと初々しさの入り混じった何とも言えない凄まじい色気。

恋愛についても性愛についても酸いも甘いも知り尽くしたフランスだからこそそんな風に客観視できてしまうわけだが、ドイツのような初心な青年にしてみれば、存在自体が目の毒だろう。

隣でプロイセンも真っ赤な顔で凝視している。

うん…ぷーちゃんDTだったっけ…と、戒律の厳しい騎士団で育った悪友にも生暖かい視線を送るフランス。

そんな風にいるだけでアレなわけだが、その上、隣で腰に腕を回すスペインに

「…トーニョ…それ…やだ……」
と、小声で言うのやめようか…。

なまじ声を抑えると、なんか違うものを連想させるから。

ほら、まだ若い国達が困ってるよ。
トイレ休憩取ってあげなくちゃいけなくなっちゃうから…。

「せやかて、支えとかんと倒れたりするんやないかって心配なんやもん。
昨夜は無理させてもうたから。」

て…スペイン、お前の方は絶対にわざとだよね?
お前はちょっと声抑えなさい。

「お前っ…こんな所で何言ってんだっ。」
坊ちゃん、目をうるうるさせるのお願いだからやめて。

ドイツが赤くなったり青くなったり忙しく顔色を変えながら胃を押さえはじめたよ。
別の部分も押さえたそうにプルプルしてるよ…。

「ほんまやもん。アーティーが親分の事愛してる言うてくれる声が可愛すぎて、親分もう我慢できんくなってしもたから…親分の手で感じてイッてまうアーティーめっちゃ可愛かったわ~。」

や~め~な~さ~~~い!!!!
公共良俗どこ行ったんだっ!
性に対してフリーダムなお兄さんにこんなこと思わせるなんて…馬鹿っぷる恐るべしっ!!
可哀想な若い国々は本気で涙目で前かがみになってプルプルしてる。
同じ男としては可哀想すぎてお兄さん見てられないっ。

「…もうわかった…いいから坊ちゃん今日はホテル戻って休んでて。」
がっくりと肩を落とすフランスに自分が他に与えている影響など微塵も気づいていないイギリスは
「でも…俺大丈夫だぞ…」
と、健気に応える。

「うん…なんていうか…坊ちゃん大丈夫でも周りが大丈夫じゃないから…。
お願い、今日はもうホテルに戻って。」

「でも…」
「アーティー、議長のフランスがああ言ってんやから戻ろな?
責任は全部フランスが取ってイギリスに取ってええ結果になるよう尽力してくれるらしいから…」

す~ぺ~い~んぅぅ!!!お前は黙れっ!!
お兄さんそこまで言ってませんっ!!!!
叫びだしたいところをフランスはすんでのところで堪えた。

そして
「ねえ…プーちゃん…今朝みたいにあの馬鹿っぷるなんとかできないの?」
と、コソリと隣のプロイセンに持ちかけると、プロイセンはドきっぱりと言い放った。

「あのな…お前は今朝何をきいてたんだよ。
俺は言ったよな?『俺もわからねえ奴には注意なんかしやしねえ』って。
あのトマトに『そこまで牽制しまくらなくても、ここ(ヨーロッパ)じゃ誰もお前のイギリスなんざ狙っちゃいねえよ』って言って通じると思うか?」

「ううん…無理だね…」
フランスはこれまでの一連の出来事を思い起こしてガックリと首を横に振る。

しかしそれはそれとして、なんとかはしなくてはならない。

とりあえずイギリスに退出してもらわないと、この会議室がとんでもないことになる。

というか…もう一部暴発してしまって泣いている国がいる。
あとで部下に着替え一式届けさせてやらないと…と、フランスは涙を堪えてそう思った。

「うん…どうでもいいから…、もうどうでもいいから坊ちゃん連れて帰って、スペイン」

国々の惨状を前に敗北感に苛まれながらそうお願いして二人が去った後、結局フランスだけじゃなくほぼ全員のHPが会議を続けるにはあまりに減りすぎていて、その日は解散になった。

うん…無理に時間通りまで続けて、超大国のおいうちに対応する元気がないからでは決してないんだよ…と心の中でそうつぶやきながら、フランスは明日をどうやって乗り越えようか…いっそのことストライキをしてしまおうか…と、本気で考え始めたのだった。



Before <<<


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