バースデーケーキやプレゼントの絵が壁にはってあって、折り紙で作った輪っかや花がそれに彩りを添えている。
本当によくドラマとかで親が小さな子どものそれを祝うシーンのような部屋の状態は、もう遥か昔に成人した大人の男に似合うかと言うと微妙なところだが、誕生日もわからない孤児で、自分はそれを祝われた事のない恋人がイメージした精いっぱいの誕生日の祝いの席。
これを昨日の深夜からずっと1人で一生懸命作っていた恋人の姿を想像すると、なんだか目の奥がツンと熱くなってきた。
なんて可愛くて可哀想で愛おしい。
テーブルの上には取り皿やカトラリが並べられているということは、起きてから料理を運ぶつもりなのだろう。
という状態の部屋の中でひときわ目につく驚くほど大きなギフトバッグ。
きゅっと巾着のように閉まったその淡いグリーンの袋には可愛らしい金色のリボンがついていて、その色合いがなんとなく恋人を思わせて、ギルは小さく微笑んだ。
「…なんだかアルトみてえな色だな」
と、おそらくプレゼントのつもりなのであろうその袋に歩み寄ると、もぞっとそれがかすかに動いた気がした。
…え???
開けていいものか気になってあたりを見回すがアーサーはいない。
しかしもし中身が生き物とかなら、窒息しやしないだろうか……
勝手に開けるのも…と思いつつも、好奇心とそんな心配が勝って、ギルベルトはどうやらゴムになっている袋の口をそっと押し広げた。
ええええ??!!!!
中を覗き込んで不覚にも驚いた。
袋には天使が入っている。
…いや、天使のような愛らしい顔の恋人様が、その袋と同じような、しかしそれよりはだいぶ小さなグリーンの袋をしっかり抱きしめたまま、すやすやとお休み中だった。
繊細なレースで縁取られた真っ白なシャツを身にまとって眠る金色の髪に同色の長い睫毛の恋人様は、本当に地上に舞い降りた天使なんじゃないかと思ってしまうくらいには愛らしい。
思わずパシャリと一枚撮る。
すると眩しかったのだろう。
アーサーはぴくりと動くと、こしこしとギルベルトのそれよりだいぶ小さな白いこぶしで目をこすった。
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