祝宴後
この会場に居たくないとコウは帰りたがったんだけど、もうそうそう全員集まれたりはしないかもだから、とりあえず場所を移そうという事になった。
そして豪華ホテルから一転、いきなりファミレス。
「ねえ、結局犯人てイヴちゃんだったの?」
私は6人揃ってからずっと持ち続けていた疑問をようやく口にできた。
「消去法で行くとそういう事になるね。」
終始無言のコウの代わりにユートが答える。
「そそ、私とヨイチはぜんっぜんそのあたりの事知らないんだけど、結局何がどうなってるわけ?」
シャルルも身を乗り出すが、一番情報持ってるはずのコウはその話が出てもさらに無言。
くら~く考え込むコウになんとなく無言になる一同。
そんな周りの空気を読めないのか読む気がないのか、多分両方なのかな、突然フロウちゃんが口を開いた。
「旅行…行きたいですねぇ」
はあ?
「夏休み最後ですし…今年ゲームがあったので、私全然遠出してないんです~」
まあ…それ以前に怖くてそれどころじゃなかったって話は……フロウちゃんにはないんだろうな…
「今からじゃ…宿取れないぞ…」
暗い口調のまま…それでもフロウちゃんの有無を言わせぬ主張は無視できないのか、コウが言う。
「大丈夫っ♪泊まるだけならうちの別荘でっ♪」
うわ~、フロウちゃんてやっぱりお嬢様なんだ、別荘なんてあるんだね。
「んじゃ、行ってくればいいだろ」
「一人じゃ…楽しくないじゃないですかっ」
「…アオイ誘えばいい」
「女の子だけじゃ…不用心じゃないですかっ。皆で行きましょうっ」
小さな拳を握りしめて主張するフロウちゃん。
「……姫…」
「はい?」
コウがいつものようにため息をついてフロウちゃんを振り返った。
「…あのな…一般的にはな、若い女の場合、若い女だけより若い男と泊まる方が不用心なんだぞ…」
「コウさん……」
「…ん?」
「まさか若い女性と見ると誰彼構わず襲ってみたくなる人…なんですか?」
ブ~~!
ユートと私は揃って水を噴き出した。
「…っな……なわけないだろっ!!!」
真っ赤になって思わず立ち上がるコウ。
「じゃ、大丈夫っ。私も幸い襲いたくなる人じゃないので。」
にっこりとエンジェルスマイルなフロウちゃん。
フロウちゃんて……すごい…。
コウが言葉に詰まった。
シャルルとヨイチも言葉なく目を丸くしている。
「コウさん一緒なら何があっても安全ですし、両親も許してくれますしっ♪」
「……お前の両親…変だよな、絶対…」
「ちょっと待った!フロウちゃんとコウって…いったいどういう関係?」
なんで親まででてくる?
「あ~、色々あってな。もういい、出先で話す。お前ら明日から5日ほど、予定大丈夫か?」
……なんだか行く事になってるよ…
「俺は平気。上と下に囲まれて親ほとんど俺の事気にしてないしっ」
まずユートが言う。
「あ~、あたしも全然平気っ!コミケ前なんてほぼ友達ん家で自分の家帰んないしっ。
親もう諦めてるよっ」
というのはシャルル。
「俺は……友達とでかけるって言ったら…多分親泣いて喜ぶと思う…」
ってヨイチ。どういう親よ。
「おしっ、姫ん家は送りついでに俺が話すから…アオイは?一応女だし親平気か?」
「ん~、うちも割と放任だから…。まあ…さすがに知らない相手だとなんだし、フロウちゃんにチラっと顔を見せてもらえれば、親も恐れ入ると思う。」
「おっけ~、んじゃ、アオイん家寄ってから姫ん家だな。
一応…支度もあるだろうし、今日はこれで解散か。
で?別荘どこだって?姫。それによって待ち合わせ場所決める」
なんだかすっかり元通りのコウ。
コウの言葉にフロウちゃんは小首をかしげた。
「どこがいいですか?」
おいおい……どこがいい?ってほどあるのか…
「それほど遠くなくて近すぎもしなくて涼しいとこ」
即言うコウに考え込むフロウちゃん。
「ん~~じゃあ蓼科あたりで…いいです?」
「上等。んじゃ、新宿か、待ち合わせ。ってことで明日午前9時集合な、遅れるなよっ」
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